会社は誰のものか 吉田望 新潮新書

吉田望さんの本と初めて出会ったのは、合コン前に?、恵比寿の書店をぶらついていた時で、ブランド1、2という本でした。ブランド論なんて退屈そうだなと思ったのですが、塩野七生が帯にコメントしていることに興味を持って、手に取ると、これが深い内容を持つ面白さで、強く惹き込まれたことをよく覚えています。「会社は誰のものか」硬いタイトルですが、実はインターネットに刺激された内容だということが読んで初めて理解出来ました。吉田望さんは電通総研で未だ黎明期のインターネットの成長を高見の見物しながら、国内で一線の研究者でいたところ、同氏の予想を上回る発展の仕方にショックを受けたのだと推測しています。

私はバブル世代なのですが、その後の氷河期の世代と、再び大量世代と続くのですが、この世代間の運不運は激しいようです。しかし、氷河期時代とネット発展期は一致しているので、氷河期にネットに関わる職業を得た人は実はバブル以上に、ずっとラッキーだと思います。吉田望さんの所属していた電通は、今でも超優良企業ですが、実はドメドメである上に、売上の70%をTV局に頼っています。規制産業であるTVに売上を頼る危険性を、吉田さんは強く体感した上での電通退社である様です。

TV局、電通は、コンテンツを握っていて、コンテンツ作成能力については、他の追随を許さないから、インターネットは恐るるに足らず、という論調を見てきましたが、10年後には、大分様変わりしていると思いますし、20年後は想像を絶する世界になっていると思います。「会社は誰のものか」教養ある人間にしか書くことが出来ない本なので、歴史的な視野を得るという意味でお奨めです。

この本に出てくる、アレクシス・ド・トクヴィルに関して、聞いたことあると思い、調べていたところ、池田信夫氏の「過剰と破壊の経済学」でも引用されていました。米国理解には必読書とのことです。


追記 2008年2月10日、以下を発見しまして、非常に深い内容を持っていたので、アップします。
http://www.nozomu.net/journal/000224.php#top
これを読んで気付いたのですが、吉田望さんは、インターネットの持つ圧倒的な破壊力と成長性を目撃し検証しながら、愛する電通の腐敗を誰よりも直感的に理解してしまった、かつ、電通の腐敗を証明出来る論理とデータも持っていた、ということだと思います。電通が国際的に存在感を持たない場合、次第に存在感を減らしていくか、最悪のケースでは、その他にリプレースされそうだという意味で、決して磐石ではないことが初めて理解出来ました。コンテンツとしてのインターネットの魅力が、この調子で増え続けると、インターネット広告の重要度が増すという意味で、電通の競合は、グーグル、百度リクルートなどになるのでしょうか。

会社は誰のものか (新潮新書)

会社は誰のものか (新潮新書)

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ブランドII

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