国富論(原丈人)と脳と仮想(茂木健一郎)

原丈人さんを知ったのは、アスキー新創刊版を通じてだったと思います。今日、国富論を読みました。

非常に興味深かったのが、茂木さんは近代科学の限界に関して、数値化できないものを全て切り捨てていることだと書いています。対象を数値化して、データとロジックで、解明、説明、普遍化するのが西洋的な近代科学で、それは大きな成果を上げました。数学、物理学、経済学、医学、その他。しかし、一方で、数値化不可能である心だとか幸福などを科学の対象外として、軽視してしまった面があります。

原さんの国富論ですが、深い内容を持っていまして、米国のMBAは経営の数値化、科学化で、大きな成果を上げた面もある。しかし、手段に過ぎない数値を、目的化してしまったところに大きな弊害があると、主張されてます。なぜ手段を目的化してしまったかというと、それは行き過ぎた数値化にあるのではないかと?

左脳はロジックを処理するのですが、一方で右脳が扱う美意識、勘、心地よさというものを、決して軽視してはいけないどころか、実は最重要項目を近代科学(とMBA?)は無視してきたのです。


なるほど、ROEを上げるには、設備をもたないほうがいいということで、製造はアジア、ソフトとサービスは米国という住み分けを、PC産業は行います。水平分業です。しかし、真の意味で人間と社会にとって使いやすい、パーベーシブなコンピューティングは、ハードとソフトの全体最適にあると、原さんは主張します。


以下は、私のオリジナルな案ですが、オープンソースコミュニティを、日本の電気大手5社〜10社がプロモートして、全世界的なオープンソース開発を行い、ある程度の形となったところで、公式に支援する、またはハードで強力にバックアップして、全体最適を図る、というのは、垂直分業の生きる道であり、かつ、発展途上国に機会を提供し得るのではないかと、考えた次第です。今後、考察を深めて、また発信したいと思います。


原さんの本は、日本と米国の技術と経営の違いを、感情論に陥ることなく、公平に深く理解、批評されているという点で、優れた良書でした。


実は、私は大前研一氏の著書を、断続的ではありますが、20年以上読んできました。彼は、まさにデータとロジックで勝負!!という点に説得力あるのですが、一方で、勘も良さそうだし、浪花節な面も併せ持っているように見えます。大前氏と原氏のIT技術と経営と経済に関する対談を聴いてみたいと思いました。(→ 紀伊国屋さん)

21世紀の国富論

21世紀の国富論

脳と仮想 (新潮文庫)

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