カオハガン島

都立中央図書館で崎山さんの著作に会って、以来、気になっていたカオハガン島へ行ってきました。予想以上に面白かったので、メモしておきます。

崎山さんがカオハガン島を購入したのが1991年なので、約20年に及ぶプロジェクトが現在進行中。カオハガン島に一目惚れして、縁あって購入に至り、日本で半年間ビサヤ語を学び準備して、住民との共存生活を始めて、喜怒哀楽のある20年を過ごした事は、著作から感じ取れて、大変感慨深く感動があります。

カオハガンは、フィリピン第2の規模を持つセブシティの隣にあるマクタン島から船で約1時間、約500人が住む小さな島です。漁民の中継地として、人が定住し始めたのは、約100年前らしい。自給自足、物々交換を基本とする質素で素朴な生活で、小さな島で買えるモノは電気代、ガス代、主要穀物程度の様です。

ただし、私は、日本からの女子大生7人組送別のために実施された子豚の丸焼の全工程に、勤勉な仕事振りを見た事から、怠惰な住民ではないと理解してます。子豚の丸焼は、手足を縛った子豚の喉を切裂き、暴れる中を押さえて、失血死させて、丁寧に全身の毛を剃って、内蔵を全て取り出し、それらを海で綺麗に洗い流し(胃、小腸、大腸の中身を海に出します、一部を手伝いました)、割いた腹に野菜や調味料等を詰めて、針金で縫い直し、棒で頭から尻まで貫き、火で炙るという一日仕事でした。

豊かな海から、海の幸を得るので、その日暮らしが可能な豊かな島。貨幣が余り役立たない場所に見えますが、最貧国の定義である日収1ドル以下の生活だそうです。水は屋根から落ちる雨水を壺に貯めて使用、電気もほとんど無く、崎山さんが壊れた発電機を修理して使用している模様。従って、夜明けと共に仕事を始めて、日没後は眠るのが基本です。

崎山さんが島に影響を持つのは所有者だからだけでなく、医療、教育を充実させて、奨学金制度により、島から初めての大卒者を出した事、闘鶏と賭けの頻度を減らした事などからも想像出来ます。20年共存した事は、尊敬に値する偉大な事です。

さて、そんなフィリピンから日本に帰国して思ったのは、日本は清潔で整然として、よく管理された金持ち国だという事実です。高度に分業、専門化された能力重視な社会です。

お金は手段であって、目的ではないはずですが、資本主義社会では、お金は目的になっていると、カオハガンからの帰途のスカイライナーで気付きました。


さて、言語について気付いた事を書きます。フィリピンは多くの島から成る国なので、当然の様に多くの言語があります。北のマニラ周辺はタガログ語が支配的で、南のセブ周辺はビサヤ語が支配的。カオハガン語はビサヤ語を単純化したローカル版です。国語のフィリピン語はタガログを編集した言語だそうです。英語も多くの人が学習しています。

カオハガンはシンプルな生活なので、ビサヤ語よりも文法や時制に複雑性がないと、崎山さんから聞きました。

すると、フランス語って、なぜあんなに複雑な時制を持つのか、突然気になる訳です。おそらく、そのような表現への必要性があったからだと思うのですが、中級者な私にはわかりません。

一方で、セブシティやマクタン島のタクシー運転手が結構上手な英語を話します。ショッピングモールで本屋に入ると、タガログ語よりも英語の本が多いです。セブシティで2番目に大きなモールの本屋だったのですが、本の種類は少なく、新刊は数える程で、古典や世界的ベストセラーが多い。やはり貧しい国で、中間層による購買力が乏しいからでしょう。

また金融、経済、ビジネス、数学、電気電子、コンピュータ、会計、法律、医療等はタガログ語での記述はなく、英語での学びになります。

英語の強みは、多くの分野で最先端の専門性が記述されている事です。日本語、フランス語、スペイン語、ドイツ語、中国語でないと勉強出来ない分野があるかと言うと、ワインについてはフランス語が優位でしょうが、英語でも相当な記述があります。

さて、日本人が英語を学ぶ際に、あらゆる専門分野の語彙を習得するのは、もちろん英米人にも不可能であって、共通語としての英語を学びます。すると、第2言語としての英語を学ぶ場所として、フィリピンは安くて近いので魅力が高いと気付きました。既に多くの日本人がフィリピンで英語を学んでいる様ですが、韓国人の方が多いそうです。日本は自国の市場規模が大きいからでしょう。

ゆっくり生きる

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青い鳥の住む島 (新潮文庫)

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